使用者責任

 事業を行うために他人を使用する者は、使用されているその他人がその事業を執行するについて第三者に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負うとされています(民法715条)。これを使用者責任といいます。

 一般に、雇用主と従業員の関係が「事業を行うために他人を使用する」の典型的な例ですが、必ずしも雇用関係の場合に限られるものではありません。

 判例上は、兄が弟に兄所有の自動車を運転させ、これに同乗して自宅に帰る途中であった事例について、使用者と被用者の関係にあたると判断したものもあるなど(最高裁昭和56年11月27日判決)、「事業を行うために他人を使用する」という要件は比較的広く認められています。

 また、「その事業を執行するについて」というのは、客観的、外形的にみて、被用者が担当する職務の範囲に属するかどうかという点から判断されています(最高裁平成22年3月30日判決)。

 使用者は、被用者の選任・監督について相当の注意をしたとき、または、相当の注意をしてもその損害が生じたときは使用者責任を免れますが、判例は、「相当の注意をしてもその損害が生じたとき」とは、「相当の注意をしてもとうてい損害の発生を免れ得ない場合を指す」としており(大審院大正4年4月29日)、使用者が責任を免れることは一般に難しいところです。


 これに対して、請負契約の注文者は、原則として、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わないとされています(民法716条)。これは、注文者が工事中に請負人を指揮監督することは基本的に想定されないからです。ただし、注文者において請負人に対する注文や指図について過失があった場合には、注文者も損害賠償責任を負うものとされています(民法716条但書)。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175