不法行為の効果

 不法行為が成立した場合、加害者は被害者に対して損害賠償義務を負うことになります。

 この損害賠償の方法は、金銭をもって補填する、金銭賠償とされるのが原則です(民法722条1項、民法417条)。

 この金銭賠償の原則の例外として、名誉毀損における謝罪広告があります。裁判所は、他人の名誉を毀損した者に対しては、被害者の請求により、損害賠償に代えて、または損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命じることができるとされており(民法723条)、その具体的な処分内容として新聞紙上に謝罪広告を出すことなどがあります。


 加害者が賠償すべき損害としては、行為と損害発生の結果の関係において、その行為から通常生じる損害について賠償義務を負うことになります。また、行為に加えて特別の事情により生じた損害であっても、その事情が予測可能であった場合に限り、その事情から通常生じる損害について賠償義務を負うことになります。

 行為と因果関係のある全ての損害について賠償義務が発生するものではなく、行為から通常生じる損害の範囲で賠償義務が発生することになります。

 賠償すべき損害の具体例としては、物品が損壊・損傷した場合、その物品の評価額や、修理費が損害となります。必要となる修理費が評価額を上回ってしまうような場合、損害は評価額までにとどまるものとされています。

 身体を傷害した場合、その治療費が損害となるほか、治療のための交通費、治療期間に対応する慰謝料が一般的に損害となります。また、治療のために休業せざるを得ず、収入が減少したような場合には休業損害が損害となり得ます。

 身体の傷害が治癒せず、後遺障害が残った場合には、後遺障害を生じたことの慰謝料と、後遺障害が生じたことにより労働能力を喪失したことによる逸失利益が損害となり得ます。この後遺障害については、一般に、労災保険法及び自賠法による後遺障害等級表により程度が区分され、その区分に応じた損害額が算定されています。


 被害者側にも落ち度があるような場合、その事情を斟酌して、損害賠償の金額が減額されることがあります。これを「過失相殺」といいます。例えば、交通事故の場合、被害者の側にも一定の落ち度がある場合があり、一定割合の過失相殺がなされることがあります。

 また、被害者が、不法行為によって利益を受けた部分がある場合、損害からその利益部分が控除されることがあります。これを「損益相殺」といいます。例えば、交通事故が労災事故を兼ねているような場合に、労災保険法による保険給付があった場合、交通事故の損害賠償において、その保険給付の分が原則として損害額から控除されています。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175