一般的不法行為の成立要件

不法行為の成立要件は、「故意・過失」「行為者に責任能力があること」「権利侵害ないし加害行為の違法性」「損害の発生」「因果関係」の5つです。


1 故意・過失

 一般に、自分の行為から一定の結果が生じることを知りながら、あえてその行為をする場合を「故意」といい、不法行為の場合には、自分の行為が他人に損害を及ぼすことを知りながら、あえてその行為を行う場合に「故意」が認められます。

 また、一般に、一定の事実を認識することができたにもかかわらず、不注意でそれを認識しないことを「過失」といい、不法行為の場合には、法律上一定の注意が求められる場合に、その注意を怠った場合に「過失」が認められます。


2 行為者に責任能力があること

 未成年者の行為については、その未成年者が自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その未成年者は賠償の責任を負いません(民法712条)。

 また、精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間の行為については、その者は賠償の責任を負いません。ただし、故意または過失によって一時的に責任を弁識する能力を欠く状態を招いたときは、賠償の責任を負います(民法713条)。


3 権利侵害ないし加害行為の違法性

 民法上、「権利または法律上保護される利益を侵害したこと」が要件とされており、これは一般に、侵害された利益がどのようなものであるか(被侵害利益)、また、侵害行為がどのようなものであるかという2つの観点から判断されます。

⑴ 被侵害利益

 被侵害利益として、財産権があげられるほか、民法上は、「身体、自由、名誉」が被侵害利益にあたることが示されています(民法710条)。具体的には、所有物を損壊された場合のほか、生命の損失(死亡)や身体の侵害(負傷)があった場合、拘束されて自由が奪われた場合、社会的客観的評価を貶められた場合(名誉毀損)などがあげられます。

⑵ 侵害行為

 侵害行為としては、刑罰法規に違反する行為が典型的なものですが、刑罰法規以外であっても、法律の定めに違反する行為は侵害行為となり得ます。一方で、正当防衛や緊急避難等、一定の場合には、違法性がないとされる場合があります(民法720条)。


4 損害の発生

 損害は、財産的損害に限られず、精神的損害も含まれます(民法710条)。

 この精神的損害は、一般に、生命、身体、自由、名誉などの人格的権利が侵害された場合に認められるものであり、財産に対する損害が生じただけでは精神的損害は通常認められていません。


5 因果関係

 加害者の行為と被害者の損害発生との間に因果関係があることが必要です。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175