意思表示によらない権利義務関係の発生

法律上の権利義務関係は、多くの場合、そのような権利義務関係を生じさせることを意図して行為者が対外的に行為をすること(この意図を外部に示すことを「意思表示」といい、意思表示を中心とする対外的行為を「法律行為」といいます)によって発生することになります。例えば、契約を締結する場合、契約当事者の双方が、契約に基づく権利義務を生じさせることを意図して契約書に調印することで、当事者双方に契約に基づく権利義務が発生することとなります。

これに対して、当事者の意図が外部に示されること(意思表示)によらずに、法律上の権利義務が発生する場合があり、民法上定められているものとしては、「事務管理」「不当利得」「不法行為」があります。


最も多く事案が生じるのは「不法行為」です。これは、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害し、これによって他人に損害を生じさせることであり、民法は、加害者は、被害者に生じた損害を賠償しなければならないことを定めています(民法709条)。例えば、交通事故を起こした加害者は、被害者に対して損害を賠償しなければならないことになります。

民法では、不法行為として、一般的不法行為(民法709条)のほか、責任無能力者の監督義務者等の責任(民法714条)、他人を使用する者等の責任(民法715条、716条)、土地の工作物等の占有者及び所有者の責任(民法717条)、動物の占有者等の責任(民法718条)が定められています。


「事務管理」とは、法律上の義務がないのに他人のためにその事務を処理することであり、例えば、隣人(本人)が留守中に、頼まれてはいないのに本人の債務の立替払をしたような場合がこれにあたります。こうした行為は本人(他人)の利益にもなることから、民法は、それが本人の意思に反しない限り、本人と事務管理をした者の間に委任に類似した債権関係が生じることを定めています(民法697~702条)。


「不当利得」とは、法律上の原因がないのに他人の財産または労務によって利益を受け、そのため他人に損害を及ぼすことであり、例えば債務が存在しないのに弁済を受けた場合などがこれにあたります。民法は、不当利得の返還を定め、善意の場合はその利益の存する限度で、悪意の場合は利益の全部に利息を付して返還しなければならないと定めています(民法703条、704条)。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175