取得時効

 取得時効とは、ある者が他人の物を一定期間継続して占有しているという事実が有る場合に、その者にその物の所有権を与え、また、所有権以外の財産権を一定期間継続して行使している事実がある場合に、その者にその権利を与える制度です。

 所有権の取得時効の要件は、①所有の意思である占有で(自主占有)であること、②その占有が平穏・公然に行われること、③その占有が一定期間継続することです。

 ③の期間は、占有者が占有の初めに善意・無過失のときは10年とされます(民法162条2項)。この「善意」とは、自分に所有権または財産権があると信じていることであり、無過失とはそのように信じることについて過失が無いこととされています。この10年の取得時効を主張する者は、自己の所有と信じたことにつき無過失であったことの立証責任を負うとされされています(最高裁昭和46年11月11日判決ほか)。

 善意・無過失ではない場合、③の期間は20年とされます(民法162条1項)。

 所有権以外の財産権の取得時効の要件は、上記①の代わりに、①’自己のためにする意思で財産権を行使することのほか、上記と同様です。


 取得時効においては「占有」という事実状態が重要となりますが、これは「自己のためにする意思で物を所持すること(民法280条)」です。

 占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によってその占有を奪われた場合、取得時効は中断します(民法164条)。ただ、この場合、占有を奪われてから1年以内に占有回収の訴えを提起することにより(民法200条、201条、203条)、取得時効の中断を回避するということができる場合があります。

 一筆の土地の一部を時効取得することも認められます(大審院大正13年10月7日判決)。境界に争いがあるような場合に、境界がどこにあるかという問題(境界の確定)とあわせて、一方が10年あるいは20年以上占有を継続してきたことによる時効取得の成否が争点となることがあります。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175