時効の完成猶予事由
時効の完成猶予のみを生じる事由(更新する効果はないもの)として次のものが定められています。
1 仮差押え等(民法149条)
仮差押、仮処分の申立についても、裁判上の請求と同様、申立をした時点で、その手続が確定するまで、時効は完成しないという効力が生じます(完成猶予)。
その後、手続が終了した場合には、その手続終了の時から6か月を経過するまでの間、時効は完成しません(完成猶予)。
仮差押、仮処分の手続は終局的な権利行使ではないため、仮差押や仮処分が決定で認められた場合でも、時効の更新の効力はありません。
2 催告(民法150条)
裁判等の手続によらず、任意の方式により催告をした場合、その時から6か月を経過するまでの間は、時効は完成しないとされています(完成猶予)。
ただし、催告によって時効の完成が猶予されている間に、重ねて催告をしても、完成猶予の効果はありません。請求書を送付することは催告にあたりますが、請求書を毎月送付し続けることで時効の完成を猶予し続けるということはできないことになります。
催告によって、一度6か月という期間を確保したうえで、その間に、訴えの提起などの強力な方法で権利を行使する必要がありますので、注意が必要です。
なお、債権の一部について訴えを提起して権利の確定を得た場合、その残りの部分について、更新の効力がありませんが、裁判例上、一般に「裁判上の催告」という効力が認められています(最高裁平成25年6月6日判決等)。この「裁判上の催告」とは、手続の終了まで催告の効果が継続しているとされるものです。即ち、一部請求の権利の確定を得てから6か月以内に、その残りの部分について、訴えの提起などの強力な方法で権利を行使する必要があるということになります。
3 協議を行う旨の合意(民法151条)
権利についての協議を行うことの合意が書面で、あるいは電磁的記録によってされたときは、次のいずれか早い時までの間は、時効は完成しません(完成猶予)。
①その合意があったときから1年を経過した時
②その合意において当事者が協議を行う期間として1年未満の期間を定めたときは、その期間を経過した時
③当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知のときから6か月を経過したとき
この協議を行う旨の合意を、期間内に繰り返すことで、再度完成猶予の効力を得ることができますが、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることはできません。
また、催告によって完成猶予がなされている期間中は、協議を行う旨の合意をした場合でも完成猶予の効力は無く、協議を行う旨の合意をしている期間中は、催告をした場合でも完成猶予の効力はないとされています。
0コメント