債務不履行による損害賠償② 賠償すべき損害
損害賠償の対象となる損害
債務不履行の場合に生じる損害としては、例えば次のようなものがあります。
・相手方の債務不履行により、財産の価値が減少した(目的物の紛失等)。
・相手方の債務不履行により、財産を支出した(修理費、治療費等)。
・相手方の債務不履行により、本来であれば入る利益を失った(目的物引渡がないために転売することができなかった、怪我をしたために働けず給料が減額した等)
これらの生じた損害が、損害賠償の対象となるかどうかは、次のとおり判断されます。
① 債務不履行と損害との間に因果関係があること(民法416条)
事実として、債務不履行と損害の発生が原因-結果の関係にあることが必要です。
② 相当因果関係
裁判例上、事実としての因果関係が認められる場合であっても、全てが賠償の範囲とされるものではなく、債務不履行と損害の間に「相当の」因果関係があることが必要とされています。
これは、事実としての因果関係を追求していくと、債務不履行による影響を受けた事実が際限なく生じているため、損害賠償の対象については一定の範囲に限定するという考え方によるものです。
ここで、弁護士費用が損害となるかについて触れておきます。これは、例えば、債務者が債務を履行しないために弁護士に委任して訴訟を提起した場合の弁護士費用が損害となるかどうか、という問題ですが、裁判例において、弁護士費用は債務不履行に基づく損害賠償の対象とはならないとされています。
損害賠償の方法
損害賠償は、当事者間に異なる合意がない限り、金銭の支払によるのを原則とします(民法417条)。
損害賠償額の減額
過失相殺(民法418条)
債務不履行またはこれによる損害の発生、拡大に関して、債権者にも落ち度があるときは、債権者の損害額のうち一定割合が控除されることがあります。これを過失相殺といいます。
損益相殺
債務不履行によって損害を被った者が、損害を被った原因と同じ原因によって利益を受けた場合に、損害からその利益が控除されます。これを損益相殺といいます。
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