受領遅滞

債務者は債務を履行する義務を負いますが、他方で、債務者が債務を履行するためには、債権者が受領する行為など、債権者の側の協力も必要となることが多いです。

債務者がなすべきことをした(履行の提供(民法413条1項)あるいは弁済の提供(民法492条、493条)といいます)にも関わらず、債権者が債務の履行を受け取ることを拒み、または受け取ることができない場合を「受領遅滞」といい、この場合、債務者は債務不履行による責任を負わないうえ(民法492条。言い換えると、解除や損害賠償を受けないということです)、債権者の側で次のような一定の責任、負担を負うこととなります。

① 債務の目的が特定物の引渡であるときは、受領遅滞となった後は、引渡をするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもってその物を保存すれば良いことになります(民法413条1項)。もともと、特定物の引渡義務を負う債務者としては、その引渡しをするまで、善良なる管理者としての注意義務をもって、その物を保存する義務を負っています(民法400条)。しかし、債権者の受領遅滞があった後は、保存義務の程度が自己の財産に対するのと同等の注意にまで軽減され、このように保存義務が軽減されることによって生じるリスクは、受領を遅滞した債権者が負担することになります。

② 受領遅滞によって債務者の履行の費用が増加したときは、その増加した費用は、債権者が負担となります(民法413条2項)。

③ 受領遅滞となった後に、当事者双方の落ち度によらない理由で債務の履行が不能となったときは、その履行不能は、債権者の落ち度によるものとみなされます(民法413条の2第2項)。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175