契約の解除① 解除の要件

当事者の双方の債務がお互いに対価関係を持つ双務契約においては、契約当事者としては、相手の債務の履行がなされない場合には、契約そのものをなかったことにして、自分の相手に対する債務を履行しないこととしたい、と考えると思います。

このように、契約当事者の一方が、契約の効力を遡って消滅させ、契約がはじめから存在しなかったと同じ効果を生じさせることを「契約の解除」といいます。

民法は、この契約の解除について、「催告による解除」と「催告によらない解除」に分けて定めていますが、基本的に、債務の履行がなされない場合には、債権者において契約を解除することができ、ただし、債務の履行がなされないことが債権者の落ち度によるものであるときは契約を解除することができない(民法543条)ものとされています。


催告による解除

当事者の一方が債務を履行しない場合に、相手方が相当の期間を定めて履行を催告し、それでもその期間内に履行がないときは、相手方は契約の解除をすることができます(民法541条)。ただし、債務の不履行がその契約及び取引の社会通念に照らして軽微であるときは、契約を解除することはできません(民法541条但書)。

なお、当事者に同時履行の抗弁権がある場合、契約を解除しようとする側は、債務を履行しない側の同時履行の抗弁権を失わせるために、自分の側の債務について、弁済の提供(履行まではいかないが、履行直前のできるだけのことをすること)をしておかなければなりません。具体的には、例えば金銭支払債務であるとすれば、債務額の現金をもって支払場所に出向くことが一般には必要とされています。


催告によらない解除

次の場合、債権者は債務者に対して催告をすることなく、直ちに契約の全部を解除することができるとされています(民法542条1項)。

① 債務の全部の履行が不能であるとき

② 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき

③ 債務の一部の履行が不能である場合または債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき

④ 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき

⑤ 以上のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき


また、次の場合、債権者は債務者に対して催告をすることなく、直ちに契約の一部を解除することができるとされています(民法542条1項)。

① 債務の一部の履行が不能であるとき

② 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき


なお、以上の契約解除の規定とは別に、賃貸借契約などの継続的な契約の場合、契約当事者間の信頼関係の状況に応じた契約解除が認められることがあります。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175