契約に基づく履行の強制
契約当事者は、契約に基づいて相手方に対して債務を履行するよう求める権利を有しますが、債務者が任意に債務を履行しないこともあります。
この場合、債権者は、履行の強制を裁判所に請求することができます(民法414条1項)。
具体的には、民事執行法等の法律に従って、強制執行の申立をすることになります。
他方で、裁判所の手続によらずに、債務者の意に反して債務者の財産を引き揚げてくるような手法は、「自力救済」として違法とされますので、注意する必要があります。
強制執行の申立をする要件として、「債務名義(民事執行法22条)」が必要となります。債務名義とは、強制執行によって実現される請求権の存在及び範囲を表示し、法律によって執行力が付与され、執行の基礎となる公の文書のことであり、典型的なものとしては裁判所の判決があります(民事執行法22条1号、2号)。
このことから、多くの場合、強制執行をするためには、その前提として、判決を得るための訴訟を提起することになります。
履行を強制する実際の手段は民事執行法に定められていますが、具体的には直接強制、代替執行、間接強制等があります。
直接強制
執行機関(裁判所)の実力により、債務者の意思を無視して、債務の内容を直接に実現する方法です(民事執行法43条以下等)。債務者の協力を必要としないため、金銭債権の履行や動産・不動産の引渡債権の履行などに用いられます。
代替執行
裁判所が債権者に対して、債務者の費用で第三者に債務の履行をさせる権限を与え(授権決定)、この授権決定に基づき、債務者以外の第三者(執行官等)によって、債務の内容を実現する方法です(民事執行法171条)。債務者以外の主体によっても履行できる場合(例えば建物の解体撤去等)に用いられます。
間接強制
裁判所が債務者に対して、履行されない期間に応じて一定の賠償をすべきことを命じ、債務者を心理的に強制することによって間接的に債務の実現を図る方法です(民事執行法172条)。債務者以外の主体が代わって履行することができない場合(例えば財産目録作成の債務等)に用いられます。
その他
意思表示をする債務(例えば登記手続をする債務など)については、意思表示を命じる判決が確定した場合、その確定した時に債務者が意思表示をしたものとみなされます(民事執行法177条)。特に、登記手続を命じる判決については、確定判決を登記手続書類として法務局の登記手続を行うことが可能です。
強制執行による履行の強制が性質上できないような場合は、損害賠償を制球するほかないことにありますし、強制執行が可能な場合であっても、強制執行を申し立てるのではなく損害賠償を請求するということも可能です(民法414条2項)。
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