契約の解除② 解除権の行使

契約解除権を行使する場合、一度解除をした以上、解除を撤回することはできません(民法540条2項)。

また、契約の当事者の一方が数人いるときは、契約の解除は、その全員から、またはその全員に対してのみすることができ(民法544条1項)、当事者の一部の者に対してのみ契約を解除するということはできません。


契約解除権を行使した場合、その契約は、はじめから存在しなかったのと同じ効果を生じますが、その一方で、債務の履行がなされなかったことが債務者の落ち度によるものである場合には、債権者は債務者に対して損害賠償請求権を行使することができます(民法545条4項)。

ただし、契約解除権を行使することによって、解除した者は自分の契約上の債務を免れることになるので、損害賠償の範囲から自分の債務であった部分を控除することになります。

例えば、売買契約において売主の落ち度により目的物の引渡がなされず、買主が契約を解除した場合で、買主が代替品を購入した場合、契約上の売買価格と代替品購入価格の差額が損害となります。

逆に、買主の落ち度により代金支払がなされず、売主が契約を解除した場合で、売主が目的物を別な相手に売却した場合、契約上の売買価格と別な相手への売却価格の差額が損害となります。


上記の契約解除権の行使とは別に、合意解除というものがあります。契約解除権の行使は、一方当事者から相手方に対する単独の意思表示であるのに対して(民法540条1項)、合意解除は、契約の当事者間の合意(いわば新たな契約)によって、それまでの契約をはじめからなかったものとするというものです。

契約当事者に解除権が発生していない場合であっても、契約当事者が合意に達すれば、原則として自由に合意解除をすることできます。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175