遺言について

被相続人が生前、自分が死亡したときの相続において、自分が望む形の財産分割を実現するためには、遺言を作成しておくことが有効です。

一般に作成されている遺言としては、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」があります。


自筆証書遺言

遺言者が遺言書を自書して作成するものであり、その意味では手軽に作成することができます。

しかし、全文、日付け及び氏名を自書し、押印することが求められ(民法968条)、変更(訂正)をする時はその場所を指示し、変更した旨を付記して署名し、かつ変更の場所に押印することが求められる(民法968条1項、3項)など、厳格な要式が定められています。

近年の法改正によって、相続財産の目録を添付する場合には、その目録については自書しなくて良く(パソコン等で作成しても良く)、目録の全ページに署名し押印すれば良いものとされました(民法968条2項)。

自筆証書遺言については、法務局における自筆証書遺言書保管制度が設けられています。

これは、遺言者が自ら法務局に遺言書の保管を申請し、法務局において遺言書を管理・保管し、相続開始後、相続人は法務局で遺言書を閲覧したり、法務局から遺言書情報証明書の交付を受けることができるというものです。

遺言書の保管を申請する際、民法が定めている自筆証書遺言の形式に適合するかについて確認してもらえること、遺言書原本は遺言者死亡後50年間、遺言書の画像データは遺言者死亡後150年という長期間に亘り管理され、この間、紛失や改ざんのリスクはないと思われること、遺言者があらかじめ通知対象者1名を希望しておくことで、遺言者の死亡後、法務局からその通知対象者に遺言書が保管されている旨の通知がなされること、相続人としては、自筆証書遺言の場合に通常求められる家庭裁判所での検認手続が不要となること等のメリットがあります。


公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が関与する下、2名以上の証人が立ち会って行うものであり、遺言書作成時、公証人から遺言内容の助言等を得ることができます。

遺言者が病気などで公証人役場に出向けない場合でも、公証人に自宅や病院に出張してもらうことで、公正証書遺言を作成することができます。

公正証書遺言は公証人役場において保管され、紛失や改ざんのリスクはないと思われます。

また、相続人としては、自筆証書遺言の場合に通常求められる家庭裁判所での検認手続が不要です。

公正証書の場合、公証人が遺言者の遺言能力について確認するため、後日、遺言が無効とされるようなリスクはほとんどないものと思われます(これに対して、前述の自筆証書遺言書保管制度では、遺言者の遺言能力について確認してもらえるわけではなく、遺言書の形式的不備がないかどうかの確認にとどまります)。

公正証書遺言を作成する場合、財産の価格に応じた手数料がかかりますが、以上のような多くのメリットがあるため、遺言により遺贈を受ける相続人としては、遺言者に公正証書遺言を作成してもらうことを検討してみても良いでしょう。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175