遺産の範囲・評価に対する修正②~寄与分

特別受益とはいわば逆向きの話になりますが、共同相続人のうち一部の者が、無償で被相続人の介護をしていたり、あるいは、被相続人の財産の維持または増加に大いに貢献していたような場合、単に被相続人の死亡時の財産を法定相続分に従って分けたのでは不公平になることがあります。

そこで、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは、その寄与の金額を被相続人の死亡時の財産の額から控除したものを相続財産とみなしたうえで、この金額に各相続人の相続分をかけて額を算定し、特別の寄与がある相続人は、算定された額に寄与の金額を加算した額をもってその者の相続分とされます(民法904条の2)。

この、死亡時の財産から特定の相続人のために控除される部分のことを「寄与分」といいます。


寄与分は、被相続人の財産の維持または増加があれば必ず認められるというものではなく、被相続人との身分関係(夫婦関係や親子関係)に基づいて通常期待されるような程度を越える程度の行為があることが必要とされます。

また、実際に被相続人の財産が維持(本来であれば減少していたところが減少しないですんだ)または増加していたことが必要となります。

寄与分が認められる具体的なケースとしては、例えば被相続人の事業(家業などの個人事業)に無報酬で従事していた場合、被相続人に資金援助をしていた場合、被相続人の療養看護を無報酬で行っていた場合などがあります。

寄与分は、あくまでも被相続人が相続すべき者を指定しなかった財産の範囲で認められるものであり、相続財産から遺贈の額を控除した残額を超えて認められることはありません(民法904条の2第3項)。


寄与分について争いがある場合、当事者間で遺産分割の合意に達するのは難しく、家庭裁判所の調停を申し立てる、あるいは申立をされることについて考える必要があるでしょう。


なお、寄与分が認められるのは相続人に限られますが、相続人以外の被相続人の親族が無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした場合、その親族は相続人に対し、相続開始及び相続人を知った時から6か月以内で、かつ、相続開始の時から1年以内であれば、特別寄与料の支払を請求することができるとされています(民法1050条)。これは、近年の相続法改正においてあらたに設けられた制度です。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175