効果的な強制執行のために④ ~預貯金の調査
預貯金に対する強制執行
強制執行の対象財産として、不動産と並んで有効なものに預貯金があります。
預貯金差押は、債権差押の方法により行うもので、不動産と比較すると、回収金額が少額となることが多いですが、強制執行手続に要する費用が少なくて済み、期間も短くて済むという点で、不動産に対する強制競売よりも有利な面があります。
預貯金の強制執行は、差し押さえようとする預貯金にかかる金融機関及び支店を特定して申し立てなければなりません(ただし、郵便貯金については支店を特定しないで行うことができます)。
取引先金融機関・支店の調査方法
従前は、債務者の取引先金融機関及び支店を調査する効果的な方法がなく、それまでの経緯において取引先金融機関及び支店が把握できているケースや、債務者の住所地あるいは所在地に近接する金融機関の支店を憶測で対象とするのが一般的でした。
しかし、近時は、金融機関に対して、弁護士法23条の2に基づき、既に債務名義を取得しており強制執行を目的とする照会であることを明示して、債務者の預金の有無、ある場合には支店及び口座番号、残高を照会した場合、預金口座の有無、口座番号、残高等の具体的な回答が得られることが多くなってきています。
ですから、今後、預貯金差押は、これまでよりも効果的な強制執行の手法となり得ることを十分認識しておくべきでしょう。
※弁護士法23条の2の照会とは?
預貯金差押えのタイミング
預貯金差押の場合、預貯金金融機関に差押命令が送達された時点での預貯金が差押の対象となりますので、できるだけ預貯金が多いタイミングで預貯金金融機関に送達されることが有利になります。
債務者に対する何らかの入金見込の時期を把握できているような場合、うまくタイミングを合わせて申立をすることで、より回収額を大きくすることが期待できます。
金融機関側の対応
預貯金差押に対して、預貯金金融機関が債務者に対して貸付を有している場合、「今後相殺予定である」との理由で差押による債権者への支払に応じないケースがあります。
この場合、預貯金金融機関としては、実際に相殺の意思表示をして債務者に対する預貯金支払債務を消滅させなければ、差押による債権者への支払を拒むことはできず、「今後相殺予定」というだけでは、差押による債権者への支払を拒む理由にはなりません。
預貯金金融機関としては、債務者との関係で期限の利益を喪失させて預金相殺を実施することには抵抗がある場合も多く、差押を得た債権者として粘り強く交渉することで、預貯金金融機関から差押預貯金の支払いを受けることができたり、あるいは預貯金金融機関からの話を受けて債務者が任意の弁済に応じるようになったりすることもあります。
預貯金金融機関が「今後相殺予定である」と主張してきた場合には、差押を得た債権者としての対応を十分検討すべきでしょう。
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