効果的な強制執行のために③ ~不動産の調査
不動産の所有状況の調査
強制執行の対象財産として、まず挙げられるものとして不動産があります。不動産は隠匿、秘匿することが困難であることや、登記制度により権利関係が明確であることから、強制執行によく馴染むものといえるでしょう。
債務者の側としても、例えば現に居住している不動産や、営業に必要な不動産などについては、何とか強制執行を避けたいと考えることが多く、そのために任意の弁済につながるということもあります。
ですから、債務者の不動産所有状況を把握することは非常に重要です。
市町村では、固定資産税を課するために、課税対象者において取得する不動産の一覧表である「名寄帳」を作成しており、課税対象者本人であれば市町村から交付を受けることができます。また、その市町村に所有する不動産が全くない者が申請すれば、市町村から「資産無きことの証明書」の交付を受けることができます。
債務者の協力を得て、「名寄帳」あるいは「資産無きことの証明書」の提示を受ければ、債務者の不動産所有状況を把握することができます。債権者が任意の弁済を求め、債務者が一定程度対応しているような段階では、こういった資料の提示を求めておくことも、後において極めて有効です。
もっとも、実際に強制執行を検討する段階では、債務者の協力は全く得られないような場合も多いと思われます。
このような場合、最初に、債務者の住所(自宅)、所在地(本社)の土地、建物について不動産登記事項を確認してみることが多いでしょう。
担保設定状況の調査
債務者所有の不動産があった場合には、担保設定状況を確認し、担保相当分を差し引いても、残りの価値があるか(評価余力)を確認します。
担保の状況について確認する場合、共同担保が設定されているかどうかも重要なポイントです。共同担保が設定されている場合、その不動産と別の不動産が併せて担保とされているということですから、法務局で共同担保目録を取得することにより、他の不動産を特定することができます。
不動産を相続未了の場合
また、債務者が相続人となるような親族の死亡があったことが把握できている場合、その親族の不動産を調査することも有効なことがあります。債務者に対する相続登記手続をとると、強制執行の対象となってしまうと考え、敢えて死亡した親族の名義のままとしている場合もあります。このような場合、債権者として債務者の代わりに相続登記の代位登記を行うことができ、相続分について強制執行の対象とすることができます。
現況の確認
債務者所有の不動産を確認できた場合、現地を訪問し、現況を確認することも重要です。現況を確認することにより、市場流通性の有無、程度についてある程度判断できるでしょう。
また、不動産の占有状況を確認し、債務者以外の第三者が占有していることを確認できる場合、第三者からの賃料収入の存在を知るきっかけとなるでしょう。
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