効果的な強制執行のために⑤ ~民事執行法上の調査手続

既に訴訟を提起して判決を得ている場合には、強制執行の対象とする財産を調査する方法として、民事執行法上のいくつかの手続があります。


債務者の財産開示手続

これは、判決などを得ている方が、裁判所に申立をして、裁判所が債務者を呼び出して、自己の財産に関する陳述をさせるというものです。

この財産開示手続は、①既に強制執行手続を行ったが完全な回収ができなかったこと、あるいは、②債権者として通常行うべき調査を行ったうえで、把握できた債務者の財産に対する強制執行を実施しても完全な弁済を得られないであろうこと、のいずれかが必要です。

裁判所が財産開示手続の実施を決定した場合、債務者は、法律上裁判所が指定した期日において、自己の財産を開示する義務を負います。債務者が正当な理由なく期日に出頭せず、あるいは虚偽の陳述をしたような場合は、罰則があります。


第三者からの情報取得手続

判決などを得ている方は、裁判所に申立をして、債務者の財産に関する情報のうち、①預貯金等について、銀行等に対し、強制執行の申立に必要な情報の提供を命じてもらうことができます。これは弁護士法23条の2の照会と、ほぼ同様の効果を得られるものと思われます。

前記の財産開示手続を済ませていれば、同じように裁判所に申立をして、②不動産について、登記所に対し、強制執行の申立に必要な情報の提供を命じてもらうこともできます。

更に、請求債権が養育費等の支払や、生命又は身体の侵害による損害賠償金の支払いを内容とする場合で、前記の財産開示手続を済ませていれば、同じように裁判所に申立をして、③勤務先について、市町村に対し、強制執行の申立に必要な情報の提供を命じてもらうことができます。

債務者本人に陳述を求める財産開示手続と異なり、銀行、登記所、市町村などの第三者に開示を求める手続ですので、①預貯金等、②不動産、③勤務先について、債務者に財産(あるいは勤務先)がある場合には、適切にその旨が第三者から報告され、強制執行の対象財産把握に奏功することが期待できます。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175