抵当権① ~抵当権の意義と効力
抵当権とは、基本的に不動産を担保の目的とするもので、目的たる不動産の引渡を受けず、不動産の所有者が引き続き不動産を利用できる状態のまま、優先的な弁済権を設定するものです。従前は、債務不履行があった場合に、目的物を競売してその代金から優先弁済を受けることが中心と考えられてきましたが、近年は、賃料など不動産の収益をもって弁済に充てることも重視されてきています。
上記のとおり、所有者が目的物を引き続き利用することができること、不動産については登記制度があり担保権を確実に主張することができることなどから、住宅ローン融資を受ける際に、その住宅に抵当権を設定するなどの方法で、一般に多く利用されています。
抵当権は、抵当不動産の上に存する建物を除いて、原則として、その目的である不動産に付加して一体となっている物にも効力が及びます(民法370条)。また、抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実にも効力が及びます(民法371条)。
抵当権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭に対しても行使することができます、ただし、抵当権者は、債務者に対してその払渡または引渡がなされる前に、差押えをしなければなりません(民法372条、304条1項、物上代位)。
また、抵当権を有する者は、債権の全額の弁済を受けるまでは、抵当権を行使することができます(民法372条、296条、不可分性)。
同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は、登記の前後によります(民法373条)。
抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができます。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければなりませんし(民法374条1項)、変更の合意は、その登記をしなければその効力を生じません(民法374条2項)。
抵当権によって担保される債権の範囲は一定の制限があり、債務の元本のほかには、満期となった最後の2年分の利息損害金等のみとされています(民法375条)。
土地に設定された抵当権の効力は、その土地上の建物には及びません(民法370条)。
他方で、民法は、抵当権の設定後に、抵当地に建物が築造された場合、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができ、優先弁済を受ける権利は、土地の代金についてのみ行使できると定めています(民法389条、これを「一括競売」といいます。なお、建物所有者が抵当地を占有することについて、抵当権者に対抗できる権利を有しているときは一括競売はできないものとされています。)。
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