先取特権④ ~不動産の先取特権
次の原因による債権を有する者は、債務者の特定の不動産について先取特権を有します(民法325条)
① 不動産の保存 不動産の保存のために要した費用または不動産に関する権利の保存、承認もしくは実行のために要した費用に関して、その債権者は、その不動産について先取特権を有します(民法326条)。
② 不動産の工事 不動産の工事の設計、施工または管理をする者が債務者の不動産に関してした工事の費用に関して、その債権者は、その不動産について先取特権を有します(民法327条)。ただし、この先取特権は、工事によって生じた不動産の価格の増加が現存する場合に限り、その増加額についてのみ存在します。
③ 不動産の売買 不動産の代価及びその利息に関して、その債権者は、その不動産について先取特権を有します(民法328条)。
同一の不動産について、不動産の先取特権が複数発生する場合、その優先権は
① 不動産の保存の先取特権
→② 不動産の工事の先取特権
→③ 不動産の売買の先取特権
という順序となります(民法331条1項)。
また、同一の不動産について売買が順次なされた場合には、売主相互間における不動産売買の先取特権の優先権の順位は、売買の前後によります(民法331条2項)。
不動産の保存の先取特権の効力を保存するためには、保存行為が完了した後直ちに投棄をしなければなりません(民法337条)。
不動産の工事の先取特権の効力を保存するためには、工事を始める前にその費用の予算額を登記しなければならず、工事の費用が予算を超えるときは、先取特権はその超過額については存在しないとされています(民法338条)。
このように、不動産の保存の先取特権、不動産の工事の先取特権は、登記手続をすることが必要となりますが、この登記をすれば、それ以前に登記がなされた抵当権に対しても優先することになります(民法339条)。この点は、基本的に登記の前後によって優先順位が決まることに対する例外的な扱いとなっています。
不動産の売買の先取特権の効力を保存するためには、売買契約と同時に、不動産の代価または利息が弁済がされていない旨を登記しなければなりません(民法340条)。
不動産の売買の先取特権と抵当権の優劣は、前述の場合と異なり、登記の前後によって優先順位が決まることになります。
0コメント