留置権
留置権は、他人の物を占有する者が、その物に関連して生じた債権の弁済を受けるまで、その物を留置できるという担保権です(民法295条)。
例えば、お店に物の修理を依頼した場合、お店側は、物の修理が完了した後も、修理代を支払ってもらうまでは、物を返却せずに留め置くことができるというものです。特に留置権を設定する旨の契約を締結しなくても、法律上の定めに基づいて当然に「返さずに留置できる」という担保権が発生するものですが、その物から優先的に弁済を受けるまでの効力はありません。
また、この留置権が生じるためには、債権が弁済期にある必要がありますし(民法295条1項但書)、占有が不法行為によって始まったものではないという必要があります(民法295条2項)
留置権を有する者は、債権の全額の弁済を受けるまでは、物全部を留置することができます(民法296条、不可分性)。
また、留置権を有する者は、留置物から生じる果実を収取し、他の債権者に先取って、その果実を自分の債権の弁済に充当することができます(民法297条1項)。
留置権を有する者は、善管注意義務をもって物を占有しなければなりません(民法298条1項)。また、留置権を有する者は、債務者の承諾を得なければ、その物を使用したり、賃貸したりはできません(民法298条2項)。留置権を有する者がこれらの点に違反した場合、債務者は、留置権の消滅を請求することができるとされています(民法298条3項)。
留置権を有する者が留置物について必要費を支出したときは、所有者にその費用を償還させることができます(民法299条1項)。また、留置権を有する者が留置物について有益費を支出したときは、これによる物の価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額あるいは増加額を償還させることができます(民法299条2項)。
留置権は、留置権者が留置物の占有を失うことによって消滅します(民法302条)。
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