所有権(1)~所有権の取得
所有権は、目的物を全面的・一般的に支配する権利で、所有者はその所有物を自由に使用し、収益し、処分することができます(民法206条)。
所有権は、一般に他人から買い受けたり、贈与を受けたり、相続したりして取得することが一般的です。
他方で、他人の所有権を承継するのではなく、独立に所有権を取得する(原始取得)こともあります。
例えば、所有者のない動産(無主物)は、所有の意思をもって占有することにより所有権を取得します(民法239条1項)。なお、所有者のない不動産は、国庫に帰属するとされています(民法239条2項)。
遺失物については、遺失物法の定めるところに従い公告をした後3か月以内にその所有者が判明しないときは、その遺失物を拾得した者が所有権を取得します(民法240条)。
埋蔵物については、遺失物法の定めるところに従い公告をした後6か月以内にその所有者が判明しないときは、その埋蔵物を発見した者が所有権を取得します(民法241条)。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、発見した者とその他人が均等割合で所有権を取得します(民法241条但書)。
特殊な所有権取得の類型として「添付(付合、混和、加工)」というものがあります。
「付合」とは、所有者の異なる数個の物が結合して分離することができなくなった場合をいいます。
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得します(民法242条)。ただし、農地の賃借人が農作物の苗を定植した場合のように、不動産に付合させる権原を有する者がその者の権原に基づいて付合させた物については、その者が所有権を持ちます(民法242条但書)。
動産が付合したときは、主たる動産の所有者が合成物の所有権を取得します(民法243条)。もともとの動産の主従の区別をすることができないときは、各動産の所有者はその付合の時における価格の割合に応じて、合成物を共有します(民法244条)。
「混和」とは、物が混ざり合って現物を識別することができない状態になることをいいます(民法245条)。この場合、付合の規定が準用され、所有者を異にする物が混和した場合、主たる物の所有者が混和物の所有権を取得しますが、主従を区別することができないときは、混和の時における価格の割合に応じて混和物を共有することになります(民法245条)。
「加工」とは、動産(材料)に工作を加えて新たな物(加工物)を作り出すことをいいます(民法246条1項)。動産を加工した場合、加工物の所有権は原則として材料の所有者に属しますが、工作によって生じた価格が著しく材料の価格を超えるときは、加工物の所有権は加工者に属します(民法246条1項本文及び但書)。加工者が材料の一部を提供したときは、その材料の価格に工作によって生じた価格を加えたものが、他人の材料の価格を超えるときに限り、加工者が加工物の所有権を取得します(民法246条2項)。
これらの付合、混和、加工を総じて「添付」といい、例えば付合した場合の従たる動産の所有者など、添付によって所有権を喪失する場合が生じます。この場合、所有権を喪失した者は所有権を取得した者に対して、不当利得の規定に従って償金を請求することができます(民法248条)。
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