時効制度の概要

 時効とは、ある事実上の状態が一定期間継続した場合に、真実の権利関係にかかわらず、その継続してきた事実関係を尊重して、これに法律効果を与え、権利の取得又は権利の消滅の効果を生じさせる制度です。

 この時効制度は、一般に、永続した事実状態がある場合に、その事実状態に基づく社会取引の安全を確保する必要があること、長い期間の経過によりその事実状態にかかる権利の証拠関係が不明瞭となっている場合に問題が生じることを回避する必要があること、他方で、権利を積極的に行使されていない場合に、その権利を法律上の保護する必要は乏しいことから、永続した事実状態をそのまま保護していくことを趣旨とするとされています。

 権利の取得の効果を生じさせるものを「取得時効」といいます。一般に利用されることが多いのは、所有権の取得時効であり、これは、ある者が他人の物を一定期間継続して占有しているという事実がある場合に、その者にその物の所有権を与えるというものです。

 また、権利の消滅の効果を生じさせるものを「消滅時効」といいます。これは、権利を行使しない状態が一定期間継続することにより、その権利を消滅させる制度です。一般に利用されることが多いのは債権の消滅時効であり、これは、長期間に亘り債権者からの請求が無く、債務者からの支払もなされていない場合に、その債権が時効により消滅し、債権者は請求できなくなり、債務者は支払義務を免れるというものです。

 消滅時効と類似する制度として、「除斥期間」というものがあります。これは、権利関係を短期間に確定する目的で、一定の権利について法律が定めた存続期間のことです。除斥期間のある権利は、その期間中に行使されることを必要とし、「更新(期間が一旦リセットされ、新たに進行すること)」は認められない等の点で、消滅時効制度とは異なります。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175