自己株式の法的地位と、自己株式の引き受け

会社は、保有している自己株式について、議決権を行使することができず(会社法308条2項)、また、配当を受けることもできません(会社法453条、454条3項)。

会社が自己株式を引き受ける者を募集しようとする場合、新株を発行する場合と同一の規制を受けることとなります(会社法第2章第2編第8節)。

この場合、会社としては、株主以外の第三者に対して募集株式の引き受けを割り当てる方法(第三者割当て)と、株主に対して募集株式の引き受けを割り当てる方法(株主割当て、会社法202条)とがあります。

第三者割当ての方法による場合、株式譲渡制限会社は、株主総会の特別決議において、「募集事項」として、募集株式の数、募集株式の払込金額等、払込期日等、増加する資本金及び資本準備金に関する事項を決定することになります(会社法第309条2項5号、199条1項、2項)。

その後、会社は、募集株式の引き受けの申込をしようとする者に対し、会社の商号、募集事項、払込の場所等を通知します(会社法203条1項、会社法施行規則41条)。

募集株式の引受の申込をする者は、申込をする者の氏名または名称及び住所、引き受けようとする募集株式の数を記載した書面を会社に提出しなければなりません(会社法203条2項)。

株主割当ての方法による場合、株式譲渡制限会社は、株主総会の特別決議において、上記の「募集事項」のほかに、株主に対して募集株式の引き受けの申込をすることにより割当の権利を与えること、募集株式の引受けの申込の期日を決定しなければなりません(会社法202条1項各号、202条3項、309条2項5号)。ただし、定款に定めがあるときは、株主総会の決議を経ずに取締役会(取締役会設置会社の場合)が新株発行に関する事項を決定することができます(会社法202条3項2号)。

その後、会社は、株主に対し、会社の商号、募集事項、払込の場所等と(会社法203条1項)、当該株主が割当を受ける募集株式の数、申込期日等を通知します(引受の申込の期日の2週間前までとされています、会社法202条4項)。

これに対して、株主が、申込期日までに申込をしないときは、当該株主は、募集株式の割当てを受ける権利を失います(会社法204条4項)。

会社は、募集株式について引き受けの申込があった場合には、申込者の中から募集株式の割当を受ける者を定め、かつ、その者に割り当てる募集株式の数を決定しなければなりません(会社法204条1項前段)。株式譲渡制限会社の場合、この決定は取締役会(取締役会設置会社の場合、会社法204条2項本文。ただし、定款に別に定めがある場合は、その定めによります)の決議によります。

更に、会社は、払込期日の前日までに、申込者に対し、当該申込者に割り当てる募集株式の数を通知しなければなりません(会社法204条3項)。

なお、募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受を行う場合を「総数引受契約」といいますが、この場合には、会社において募集株式の引き受けの申込をしようとする者に対する通知(会社法203条1項)をする必要は無く、申込者が申込の書面を会社に提出(会社法203条2項)する必要もありませんし、会社において割当の決定(会社法204条1項、2項)及び通知(会社法204条3項)をする必要もありません(会社法205条1項)。

ただし、会社は、その総数引受契約について、取締役会(取締役会設置会社の場合、会社法204条2項本文。ただし、定款に別に定めがある場合は、その定めによります)の承認を得なければなりません(会社法205条2項本文)。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175