請負契約における契約不適合責任・担保責任

請負契約において、請負人は仕事を完成させる義務を負い、仕事の結果について、売買契約における売主と同様の契約不適合責任・担保責任を負います(民法559条)。


契約不適合責任

具体的には、次のような場合に請負人が責任を負うことになります。

引き渡された目的物が契約内容に適合しないとき(主に、品質面での不適合が考えられます)は、注文者は、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡のいずれかを選択して、売主に対して請求することができます(民法559条による562条1項本文の準用、追完請求権)。

また、引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合で、注文者が相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、注文者はその不適合の程度に応じて報酬の減額を請求することができます(民法559条による563条1項の準用)。

さらに、履行の追完がそもそも不能であるときや、請負人が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示した等の事情があるときは、注文者は請負人に対して追完の催告をすることなく、直ちに報酬の減額を請求することができます(民法559条による563条2項の準用)。


なお、引き渡された目的物が契約内容に適合しない場合、注文者としては、前記の追完請求や代金減額請求ではなく、債務不履行を理由として契約の解除をすることもできます(民法559条による564条の準用、541、542条)。

更に、契約内容の不適合について、請負人に落ち度がある場合には、注文者は、債務不履行を理由として損害賠償請求をすることができます(民法民法559条による564条の準用、415条、545条4項)。


以上のような請負人の契約不適合責任について、注文者が提供した材料の性質または注文者の与えた指図によってその不適合が生じた場合には、注文者は、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約解除をすることができません(民法636条本文)。

ただし、請負人がその材料または指図が不適当であることを知りながら注文者にそのことを告げなかったときは、注文者は原則どおり、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約解除をすることができるとされています(民法636条但書)。


契約不適合責任の期間制限

注文者は、種類または品質に関して、契約不適合の事実を知った時から1年以内に不適合の事実を請負人に通知しないときは、その不適合を理由として、追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求及び契約の解除をすることができません(民法637条1項)。

ただし、仕事の目的物の引渡時または仕事が終了した時に、請負人がその不適合の事実を知り、または不適合の事実を知らなかったことについて重大な過失がある場合には、不適合を知った時から1年以内に不適合の事実を請負人に通知しなかったとしても、その時点で追完請求等ができなくなるということはありません(民法637条2項)。

以上の1年の期間制限とは別に、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び契約の解除は、債権の消滅時効制度の適用を受けます。 このため、注文者の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び契約の解除は、注文者が契約不適合の事実を知った時から5年でその権利が消滅します(民法166条1項1号)。また、注文者が契約不適合の事実を知らないままでも、引渡時または仕事が終了した時から10年が経過すると同様にその権利が消滅します(民法166条1項2号)。

 

契約不適合責任を免除する特約

当事者間で「請負人は契約不適合責任を負わない」旨の特約を結ぶことにより、請負人として契約不適合責任を負わないこととすることができます(民法559条、572条)。

ただし、このような特約がある場合でも、請負人が自分の知っていて告げなかった事実については、契約不適合責任を免れることはできません(民法559条、572条)。

 また、事業者と消費者の間の請負契約で消費者契約法が適用される場合など、消費者である注文者を保護するための規定が別途定められており、請負人が契約不適合責任を負わない旨の特約が無効とされることがあります。

さらに、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(住宅品質確保法)」により、新築住宅の請負契約において、請負人は、構造耐力上主要な部分及び雨水の浸入を防止する部分について、注文者に引き渡した時から10年間の瑕疵担保責任を負うこととされており、これに反する特約で注文者に不利なものは無効とされます(住宅品質確保法94条2項、2項)。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175