賃貸借⑦ 賃借権の賃貸人側第三者との関係

賃借権の対抗力(賃借人と賃貸人側第三者との関係)

民法による対抗力

不動産の賃借権は、賃借権の登記をしたときは、その不動産をあらたに取得した第三者に対しても対抗することができます(民法605条)。ただ、この賃借権の登記をするためには、賃貸人と賃借人が共同で登記申請をする必要があります。


借地借家法による対抗力

借地借家法は、賃借人がより容易に不動産の賃借権を対抗できるよう、特別な対抗要件を認めています。

まず、借地権については、土地について賃借権(借地権)の登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有しているときは、その後、その土地をあらたに取得した第三者に対して借地権を対抗することができます(借地借家法10条)。建物の登記については建物所有者が単独で手続をとることができるので、借地人は、地主の協力がなくても、借地権を第三者に対抗できるものとすることができます。

また、借家権については、建物について賃借権(借家権)の登記がなくても、建物の引渡があったときは、その後、その建物をあらたに取得した第三者に対して借家権を対抗することができます(借地借家法31条)。建物の引渡は一般にその建物の鍵を受け渡すことでなされていますので、借家人は、賃貸人から賃借した建物の鍵を渡されることをもって、借家権を第三者に対抗できるものとすることができます。


賃貸人の地位の移転(賃貸人側第三者と賃借人との関係)

前記のとおり、借地権、借家権は、借地借家法等により特別な対抗要件が認められており、借地人や借家人としては、不動産をあらたに取得した第三者に対しても賃借権を対抗することができます。

この場合、不動産をあらたに取得した第三者としては、従前の賃貸人から、賃貸人としての地位を承継することとなります。

民法605条の2は、賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移動すると定めています。

ただし、この賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産についてあらたな賃貸人が所有権移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができません(民法605条の2、第3項)

他方で、不動産の譲渡人と譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しません(民法605条の2第2項)。この場合、譲受人が譲渡人に賃貸し、譲渡人が従前の賃借人に賃貸(転貸)するという関係となります。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175