賃貸借② 賃貸借の終了
民法が定める賃貸借終了事由
期間の定めがない場合
当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができますが、解約の申入れによって直ちに賃貸借が終了するのではなく、解約申入れ後一定の猶予期間をもって、賃貸借は終了します(民法617条1項)。
猶予期間は賃貸借の目的物によって異なり、
土地の賃貸借 1年(民法617条1項1号)
建物の賃貸借 3か月(民法617条1項2号)
動産及び貸席の賃貸借 1日(民法617条1項3号)
とされています。
期間の定めがある場合
当事者が賃貸借の期間を定めたときは、その期間が満了することにより、賃貸借が終了するのが原則です(民法622条、597条1項)。
しかし、賃貸借の期間が満了した後、賃借人が賃借物の使用または収益を継続している場合、賃貸人がそのことを知っていて異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定されます(民法619条)。
ただし、この推定される賃貸借について、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができ、期間の定めがないばあいと同様、解約申入れ後一定の猶予期間(民法617条1項、後述します)をもって、賃貸借は終了します(民法619条1項但書)。
また、この推定される賃貸借について、従前の賃貸借について当事者が敷金以外の担保を供していたときは、その担保は継続せず、終了することとなります(民法619条2項)。
賃借物の全部滅失等
賃作物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合、賃貸借は終了します(民法616条の2)。
借地借家法による借地権の終了の制限
借地借家法では、民法が定める賃貸借終了事由に対して、より賃貸借を存続させる方向での修正、賃貸借終了の制限が図られています。
期間の定めがない場合
期間の定めのない借地権は、30年存続し(借地借家法3条)、30年の期間満了時において、後記の期間の定めがある借地権と同様の制限を受けます。
期間の定めがある場合
賃貸借の期間が満了する場合に、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、従前と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法5条1項)。ただし、更新後の契約期間は1回目の更新では存続期間が20年、その後の更新では存続期間が10年となります(借地借家法5条1項、4条)。
また、賃貸借の期間が満了した後、賃借人が賃借物の使用または収益を継続している場合、契約の更新があったものとみなしています(借地借家法5条2項)。この場合も、更新後の契約期間は1回目の更新では存続期間が20年、その後の更新では存続期間が10年となります(借地借家法5条2項、同条1項、4条)。
民法上の規定では「推定される」であったところが、「みなす」とされることにより、後日になって賃貸人の側から更新を争う余地がないことになります(借地借家法5条2項)。
賃貸人としては、賃貸借を期間満了で終了させようとする場合、賃借人からの契約の更新の請求や、使用または収益の継続に対して、遅滞なく異議を述べなければなりませんが(借地借家法5条1項)、その場合でも、賃貸人として土地の使用を必要とする事情のほか、賃借人による土地の利用状況、土地明渡料の申出金額などを考慮して、正当の事由があると認められなければ賃貸借の終了は認められません(借地借家法6条)。
さらに、借地権について契約の更新がないときは、借地人は地主に対して、建物の買取を請求することができます(借地借家法13条)
借地借家法による借家権の終了の制限
期間の定めがない場合
期間の定めのない借家権は、解約の申入れの後6か月の経過をもって終了します(借地借家法27条)。
この解約申入れについても、賃貸人として建物の使用を必要とする事情のほか、賃借人による建物の利用状況、建物明渡料の申出金額などを考慮して、正当の事由があると認められなければ賃貸借の終了は認められません(借地借家法6条)。
期間の定めがある場合
賃貸借の期間が満了する場合に、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法26条1項)。
ただし、更新後の契約は、期間の定めのないものとなります(借地借家法26条1項但書)。
更に、仮に更新しない旨の通知があった場合であっても、建物の賃借人が使用を継続していれば、賃貸人から遅滞なく異議が述べられない限り、契約の更新があったものとみなしています(借地借家法26条2項)。この場合も、更新後の契約は、期間の定めのないものとなります(借地借家法26条2項、同条1項但書)。
建物の賃貸人としては、建物賃貸借を期間満了で終了させようとする場合、期間満了の1年前から6か月前までの間に賃借人に対して更新をしない旨の通知をし、更に、期間満了後に賃借人が使用を継続しているときは遅滞なく異議を述べなければなりませんが、その場合でも、賃貸人として建物の使用を必要とする事情のほか、賃借人による建物の利用状況、建物明渡料の申出金額などを考慮して、正当の事由があると認められなければ賃貸借の終了は認められません(借地借家法28条)。
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