売買① 売買契約の性質
売買契約は、一般に広く行われている契約であり、その内容は、売主が買主に対して目的物の権利を移転し、買主が売主に対してその代金を支払うというものです。
売主としての契約上の義務
権利の移転
売主は、売買の目的物の権利を買主に移転する義務を負い(民法555条)、権利の移転について登記や登録などを必要とする場合、その手続を行う義務も負います(民法560条)。
登記を必要とする場合としては不動産(土地・建物)の売買契約があり、登録を必要とする場合としては自動車の売買契約があります。
契約不適合責任
売主は、目的物の種類、品質、数量について、契約の内容に適合するものを引き渡す義務を負います(民法561条)。この責任は「契約不適合責任」や「担保責任」と呼ばれています。
具体的には、次のような場合に売主が責任を負うことになります。
① 他人の権利の売買の場合
他人の権利を売約した売主は、その権利を取得して、買主に移転する義務を負います(民法561条)。
② 目的物の種類・品質・数量が契約の内容に適合しない場合
a) 追完請求権
引き渡された目的物の種類・品質・数量が契約内容に適合しないときは、買主は、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡のいずれかを選択して、売主に対して請求することができます(民法562条1項本文)。これを追完請求権といいます。
これに対して売主は、買主に不相当な負担を課するものでなければ、買主の請求した方法と異なる方法による追完をすることができます(民法562条1項但書)。
契約の内容に適合しないことが、買主の落ち度による場合には、買主は追完請求をすることができません(民法562条2項)。
b) 代金減額請求権
引き渡された目的物の種類・品質・数量が契約内容に適合しない場合で、買主が相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができます(民法563条1項)。
履行の追完がそもそも不能であるときや、売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示した等の事情があるときは、買主は売主に対して追完の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができます(民法563条2項)。
契約に適合しないことが買主の落ち度による場合には、買主は代金減額請求をすることができません(民法563条3項)。
c) 契約の解除、損害賠償請求
なお、引き渡された目的物の種類・品質・数量が契約内容に適合しない場合、買主としては、前記の追完請求や代金減額請求ではなく、債務不履行を理由として契約の解除をすることもできます(民法564条、541、542条)。
更に、契約内容の不適合について、売主に落ち度がある場合には、買主は、債務不履行を理由として損害賠償請求をすることができます(民法564条、415条、545条4項)。
買主としての契約上の義務
買主は、売買代金を売主に支払う義務を負います(民法555条)。
売買の目的物の引渡について期限を決めたときは、代金支払期限も同じ日に定めたものと推定されます(民法573条)。そして、売買の目的物の引渡と同時に代金を支払うべきときは、その引渡の場所において代金を支払わなければなりません(民法574条)。
買主が売買代金の支払いを拒むことができる場合として、売買の目的物について権利を主張する者がいる場合や(民法576条)、買い受けた不動産について契約の内容に適合しない抵当権登記がある場合(民法577条)等が定められています。
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