債権者の関係者の財産から回収できる場合とは

関係者財産からの回収の可能性

債権回収においては、基本的に、債務者が所有する財産をどのように調査し、どのように回収を図るかがポイントとなりますが、現実の場面では、債務者が資力不足に陥った時点では既に債務者には見るべき財産がないことも多いと思われます。

他方で、債務者の財産を調査する過程で、債務者本人には見るべき財産がないものの、債務者の関係者が一定の財産を所有しているケースや、債務者が強制執行を逃れるためともみられる財産処分を行っていることが明らかになるケースも少なくありません。

このようなケースについて、債務者の関係者の財産から回収を図る余地がないかを検討することが有益です。

もとより、債務者の関係者は債務者本人ではないので、法律上、そもそも債務者の関係者に対する請求権が認められるかどうかが非常に大きな問題となりますが、債務者の関係者においては資力を有している場合もあり、法律上の請求権が認められれば現実の回収につながる場合もあります。

債務者の関係者の財産から回収を図ろうとする場合、民法上の詐害行為取消、債権者代位という制度や、会社法上の役員の責任追及の制度を活用することが考えられます。


債権者取消権

このうち、最もよく用いられるのは詐害行為取消(民法423条)でしょう。これは、債務者が故意に財産を減少する行為をするときは、債権者においてその行為の効力を否認して、たとえば贈与の目的物を取り戻せるというものです。

取消の対象となる行為の要件は、「詐害行為」であることと、「詐害意思」があることです。

ここでいう詐害行為とは、その行為によって債務者の総財産が減少して、債権者が十分な満足を得られなくなることとされています。また、詐害意思とは、詐害行為であることを認識していることですが、債務者と受益者(債務者の行為の相手方)の双方の認識が必要となります。

詐害行為取消権の消滅時効は、詐害行為を知ったときから2年、詐害行為がなされた時から10年とされています(民法426条)。詐害行為とみられる行為を認識した時は、その日時、認識した経緯を記録しておくべきでしょう。

詐害行為取消は訴訟を提起して行う必要があるため、「詐害行為」にあたるか、「詐害意思」があるかは、常に裁判所により判断されることとなります。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175