遺産分割を成立させるための手続
当事者間で遺産分割の合意に至らない場合の解決方法としては、家庭裁判所の調停手続、審判手続を利用することができます。
遺産分割調停
遺産分割の調停を申し立てる場合、申立先の裁判所は、基本的に、相手方の住所地の家庭裁判所です。相手方が複数いてそれぞれ住所地が異なる場合は、いずれかの相手方の住所地の家庭裁判所を申立先とすることを選ぶことができます。
遠方の裁判所に申し立てざるを得ない場合でも、現在は電話会議システムを利用して、出廷せずに調停続きを進めることができることも多くあります。また、今後は、WEB会議システムを利用した調停手続も用いられることになると思われます(民事訴訟では既にWEB会議システムを利用した手続が広く用いられています)。
遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員会が申立人と相手方との間に入り、双方の話を交互に聞きながら話し合いを進めます。
遺産分割調停においてよく争点とされるのは、遺産の評価(特に不動産、非上場株式)や特別受益、寄与分の有無・金額についてです。
不動産の評価額について合意に至らず、調停、審判等の法的手続に至った場合、遺産である土地、建物について不動産鑑定士に依頼して不動産鑑定を行い、その鑑定結果に拠る評価額とすることもあります。
また、非上場株式の評価額について合意に至らず、調停、審判等の法的手続に至った場合、公認会計士による株価鑑定を行い、その鑑定結果に拠る評価額とすることもあります。
不動産鑑定、株価鑑定を行う場合、相当の鑑定料が必要となるので、その点も考慮の上、相互に譲歩しながら、評価額について合意できるかどうかがポイントとなります。
不動産について言えば、共同相続人の全員が不動産の取得を希望しない場合には、不動産を実際に売却して、その売却代金から売却のための費用(仲介手数料、登記費用等)を差し引いた手取額をもって、評価額とする方が実益が大きいこともあります。
寄与分については、遺産分割調停の中で協議をしていくことが多くありますが、遺産分割調停がまとまらず、審判での決定を求める場合、遺産分割とは別に「寄与分を定める処分の申立て」をする必要があります。
遺産分割調停において話し合いがまとまった場合、裁判所が、合意した内容を「調停調書」にまとめて、手続きが終了します。
話し合いがまとまらない場合、調停は打ち切り(不成立)となります。
遺産分割審判
遺産分割調停が不成立で終了した場合、調停申立のときに遺産分割の審判申立があったものとみなされ、審判の手続が開始します。あらためて遺産分割審判の申立をする必要はありません。
審判手続では、当事者が主張や反論、資料等を提出したうえで、家庭裁判所が審判書を作成して具体的に誰がどの遺産を取得するのかを定めます。
この審判手続により、当事者間に合意が成立しなくても、最終的には家庭裁判所の判断(審判書)により遺産分割が成立することとなります。
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