離婚後の生活:養育費について
父母が協議離婚をするときは、子の監護に要する費用の分担について必要な事項を協議で定めるものとされており(民法766条1項)、子を監護しない親は、子を監護する親に対して一定の養育費を分担する必要があります。
婚姻期間中においても、子の監護をしていない親は、子の監護をしている親に対して養育費の支払義務を負いますが、これは、婚姻から生じる費用(民法760条)に含まれるものと考えられています。ですから、子を監護する側の親としては、離婚が成立するまでの養育費については、これを含む婚姻費用として相手方に支払を求め、離婚成立後については、養育費の支払を相手方に求めるのが一般的です。
また、離婚の際に養育費の額を定めなかった場合でも、離婚後にあらたに養育費を請求することができます。
養育費の負担は、親に存する余力の範囲内で行えば足りるような「生活扶助の義務」ではなく、親が子に対して自己と同程度の生活を常にさせるべき「生活保持の義務」であるとされています(大阪高裁平成6年4月19日決定)。
このため、養育費の額については、養育費の対象となる子が、養育費を支払う側の親と同程度の生活を維持することができるかどうかという観点から判断されることとなります。
養育費の対象となる「子」であるかどうかは、単に未成年かどうかではなく、親の扶養を要する状態であるかどうかで判断されます。このため、成人年齢18歳に達した後でも、例えば、大学で教育を受けることが親と同程度の生活を維持させるため必要といえる場合には、親の扶養を要する状態であると判断されることもありえます(東京高裁平成12年12月5日決定)。
養育費の金額については、現在の裁判手続上は、裁判官による研究会が発表した算定表を用いて算定することが定着しています。この算定表は、子どもの年齢や人数などから算出した一般的な生活費を、養育費の支払を受ける側と、養育費を支払う側の収入に応じて按分するという考え方で作成されており、裁判所のWEBサイトでも公表されています(平成30年度司法研究 養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)。
裁判所の手続では、この算定表を基礎として、住宅ローンを返済している場合や、私立学校で高額な学費を支払っている場合など、個別の事情を反映させて養育費の金額が算定されることとなります。
離婚の際に養育費の金額について合意した場合や、一度裁判所の手続で養育費の額が定められた場合でも、その後に事情の変更があったときは、養育費の金額を協議して変更することができ、また、家庭裁判所で、養育費の額を変更(増額または減額)することの調停、審判を申し立てることもできます。
養育費の額を変更する理由となるような事情の変更としては、収入の大きな増減(退職、転職等)、家庭環境の変更(再婚や出産など)、支出の大きな増減(進学による教育費増等)などが考えられます。
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