婚姻の成立と効果

婚姻の成立

 婚姻は、婚姻の届出をすることによって成立します。

 もちろん、双方に婚姻する意思があることが前提であり、仮に、当事者間に婚姻をする意思がなければ、たとえ婚姻の届出をしたとしても、その婚姻は無効ということになります。

 例えば、双方が婚姻届出に署名して、片方の当事者が役所に届出をしに行くことにしたものの、実際に届出をする前に、もう片方の当事者が婚姻する意思を撤回したような場合、婚姻意思が合致していないことから無効となります。

 婚姻届や離婚届については、一旦婚姻届や離婚届に署名したものの、その後婚姻する意思や離婚する意思を撤回したような場合、届出があっても受理しないよう市町村に申し出ることで、届出が受理されることを防ぐ、いわゆる「不受理申出制度」が設けられています。

婚姻の効果

 婚姻によって、当事者の間に夫婦関係が成立し、法律上次のような婚姻の効果が生じます。

1 同居・協力・扶助義務(民法752条)

 同居し、互いに協力し扶助することは、婚姻の基本とされています。

 同居を拒む相手に対して、法的に同居を強制することはできませんが、相手が正当な理由なく同居に応じないことは、「悪意の遺棄」として離婚原因となると考えられます(民法770条1項2号)。

 同居を拒否できる正当な事由としては、相手の暴力がある場合や、相手方の不貞行為により夫婦としての実質を失っている場合などが考えられます。

 また、夫婦としての協力・扶助義務は、一般に「生活保持の義務」として、相手にも自分と同程度の生活を常にさせるべき義務であると考えられています。

 「生活扶助の義務」の場合、余力の範囲内で行えば足りるものであるのに対して、夫婦間の協力・扶助義務はこれよりもより踏み込んだ義務となります。

 また、夫婦は、相互に婚姻から生じる費用(生活の費用、子どもの養育の費用など)を分担する義務を負います(民法760条、婚姻費用分担義務)。特に、夫婦が別居に至った場合に、配偶者の一方から他方に対して婚姻費用分担を請求することが多いところです。

2 貞操義務

 夫婦は互いに貞操を守る義務を負い、「不貞な行為」は離婚原因とされています(民法770条1項1号)。

 夫婦の一方が不貞行為をした場合、不貞行為をした配偶者は、他方の配偶者に対する貞操を守る義務に違反したことになりますが、不貞行為の相手方である第三者も、他方の配偶者の権利を侵害したことになり(最高裁昭和54年3月30日判決)、他方の配偶者に対して慰謝料の支払義務を負うことになります。

3 夫婦の同氏(民法750条)

 夫婦は同一の氏を称することとされており、婚姻の際に夫または妻の氏のいずれを称するかを決めるものとされています。

 しかし、一般に、いわゆる夫婦別姓の意見が主張されていること、通称使用として別姓を称する夫婦があることは一般に知られているとおりです。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175