債権の差押え

 預貯金差押が、強制執行手続に要する費用が少なくて済み、期間も短くて済むという点で有効なことがあることは以前に述べました。

 預貯金のほか、株式、投資信託、保険などについて差押えをすることもできます。

 保険については、保険金支払請求権を差し押さえるほか、解約返戻金請求権を差し押さえることもでき、解約返戻金請求権を差し押さえた債権者は、取立のために債務者の有する解約権を行使することができるとされています(最高裁平成11年9月9日判決)。

 証券会社、保険会社においても、弁護士法23条の2に基づき、既に債務名義を取得しており強制執行を目的とする照会であることを明示して、債務者の取引の有無を照会した場合、具体的な回答が得られる場合があるようですので、取引が窺われるような事情がある場合には、積極的に調査をしてみるべきでしょう。

 さらに、債務者が会社員、公務員などの場合、給与の差押が極めて有効です。債務者の勤務先を特定できていれば、勤務先を第三債務者として給与差押を行うことにより、継続的に回収を図ることができます。

 給与については、債務者の生活保障の要請から一定の部分が差押禁止とされており、具体的には給与手取額の4分の3(ただし、その額が33万円を超える場合は33万円まで)が差押禁止とされています。退職金についても、同様の趣旨で手取額の4分の3について差押禁止とされています。

 債務者としては、給与の全額を差し押さえられるわけではなく、差押えを回避するために勤務先を退職するという行動にまでは出ないケースが多いものと思われます。債権者としては、少額ずつであっても、毎月継続的に回収を図ることが期待できます。

 なお、債務者が会社役員であるような場合ですと、会社の側で役員報酬の額を改定する等の対応を採られることもあり、差押による回収が難しくなります。

 また、債務者が個人事業主の場合、債務者の取引先を第三債務者として売上にかかる債権の差押を行う必要があり、給与所得者の場合と比較して一般には回収が難しいでしょう。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175