質権① ~質権とは

質権とは、債権者が、その債権の担保として受け取った物を、債務の弁済があるまで留置して、その弁済を間接的に強制するとともに、債務の弁済がない場合には、その物によって他の債権者に優先して弁済を受けるというものです。抵当権と異なり、所有者が目的物を引き続き利用することができませんが、動産や債権についても担保権を設定することができるというメリットがあります。

例えば、住宅ローン融資を受ける際に、その住宅の火災保険の保険金請求権に対して質権を設定するなどの方法で、利用されています。


質権は、譲り渡すことができない物を目的とすることはできず(民法343条)、債権者にその目的物を引き渡すことによって効力を生じます(民法344条)。

質権を有する者は、債権の全額の弁済を受けるまでは、質物全部を占有することができます(民法350条、296条、不可分性)。

また、質権を有する者は、質物から生じる果実を収取し、他の債権者に先取って、その果実を自分の債権の弁済に充当することができます(民法350条、民法297条1項)。

質権を有する者は、善管注意義務をもって質物を占有しなければなりません(民法350条、298条1項)。また、質権を有する者は、債務者の承諾を得なければ、その物を使用したり、賃貸したりはできません(民法350条、298条2項)。質権を有する者がこれらの点に違反した場合、債務者は、質権の消滅を請求することができるとされています(民法350条、298条3項)。

質権を有する者が質物について必要費を支出したときは、所有者にその費用を償還させることができます(民法350条、299条1項)。また、質権を有する者が質物について有益費を支出したときは、これによる物の価格の増加が現存する場合に限り、所有者の選択に従い、その支出した金額あるいは増加額を償還させることができます(民法350条、299条2項)。

債務が弁済期に履行されないときに、質権者が質物の所有権を取得する、あるいは任意に売却して優先弁済に充てることを流質(りゅうしち、ながれしち)と言いますが、民法上、

質権を設定する契約の時点、あるいは債務の弁済期よりも前の時点で、あらかじめ流質の契約をしておくことは禁止されています。質権者が質物によって優先弁済を受けるためには、原則として、競売などの法律に定める方法によらなければならないものとされています(民法349条)。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175