譲渡制限会社が自社で株式を買い取る場合

譲渡承認請求がなされた場合に、自社で株式を買い取る対応をする場合には、会社が譲渡を承認しないことの決定を通知してから40日以内に、会社が、自社で株式を買い取ることを通知しなければなりません(会社法145条2号)。

更に、会社が買取の通知をする際、通知に先立ち、1株当たりの純資産額(会社法施行規則で定められた計算によります)に対象株式数を乗じた金額を供託し、その供託を証する書面を交付しなければならないとされています(会社法141条2項、142条2項)。

更に、会社が自社で株式を買い取ることについて、自己株式の取得として株主総会の特別決議を要します。

具体的には、

①会社が譲渡制限株式を買い取ること

②買い取る譲渡制限株式の数

について、株主総会の特別決議を経る必要があります。

なお、この自己株式取得にかかる株主総会特別決議において、譲渡承認を請求した株主は、議決権を行使することができません(会社法140条3項本文)。

会社が、譲渡承認請求があった日から2週間(定款でこれより下回る期間を定めていた場合には、その期間)以内に取締役会あるいは株主総会での決定内容を通知しなかった場合や、譲渡承認請求に対して承認しない旨の決定を通知してから10日以内に会社の指定買取人が買取りの通知を行わず、かつ40日以内に会社が自ら買い取る旨の通知を行わなかった場合、会社が譲渡について承認する決定をしたものとみなされます(会社法145条)。


以上によれば、一般に、会社としては、株主から譲渡承認請求が出されたものの、譲渡しようとする相手について承認できないと判断し、自社で株式を買い取ろうとするならば、

① 譲渡承認請求があった日から2週間以内に、取締役会あるいは株主総会の承認しない旨の決議を経て、その決定を株主に通知する

② 承認しないことを決定を通知した日から40日以内に、株主総会の特別決議と、所定の金額の供託を済ませたうえで、供託書の写しを添付して、自社で買い取ることを通知する

ことが必要ということになります。

ひいらぎ法律事務所

弁護士 渡辺 慎太郎 (福島県弁護士会所属) 福島市にある法律事務所です TEL.024-572-6173 FAX.024-572-6175