賃貸借⑧ 賃借権の賃借人側第三者との関係
賃借権の譲渡・転貸(賃貸人と賃借人側第三者との関係)
借地人が借地上の建物を第三者に譲渡することは、第三者が自ら所有する建物をもって土地を使用することとなりますから、賃借権の譲渡にあたります。また、借地人が借地を第三者に賃貸することは、賃借物の転貸にあたります。
民法上、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡すこと、賃借物を転貸することはできません(民法612条1項)。賃借人が賃貸人の承諾無しに第三者に賃借物の使用または収益をさせた場合、賃貸人は賃貸借契約を解除することができます(民法612条2項)。
賃借人が賃貸人の承諾を得て賃借権を譲渡した場合
賃借人が賃貸人の承諾を得て賃借権を譲渡した場合には、賃貸人と譲受人との間で賃貸借契約が継続することとなります。
また、賃借人が賃貸人の承諾を得て賃借物を転貸した場合、賃貸人と賃借人との賃貸借契約は従前通り継続したうえで、賃借人と転借人の間に新たな賃貸借契約(転貸借契約)が締結されることとなります。
この転貸借契約関係が適法に成立した場合、民法は賃貸借契約と転貸借契約の関係について、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負うと定めています。しかも、転借人が賃借人に対して賃料の支払期日以前に前払いをしていた場合でも、転借人は前払いをもって賃貸人に対抗することはできません(民法613条1項)。
他方で、転貸借契約関係が成立した場合、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借契約を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができません(民法613条3項)。ただし、賃貸人が賃借人の債務不履行に基づいて解除できる場合には、その賃貸借契約の債務不履行解除あるいは合意解除によって、転貸借契約も終了することとなります(民法613条3項但書)。
借地権の譲渡転貸について賃貸人の承諾が得られない場合(借地借家法による規定)
前述のとおり、民法上、賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡すこと、賃借物を転貸することはできません(民法612条1項)。
しかし、借地権者が賃借の目的である土地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得しまたは転借をして地主が不利になるおそれがないにもかかわらず、地主が借地権の譲渡あるいは転貸を承諾しないときは、借地権者は、裁判所に対し、賃貸人の承諾に代わる許可を求めることができます(借地借家法19条1項)。
この場合、裁判所が賃借権に関する従前の事情を考慮したうえ、借地条件の変更や一定の金銭の支払い等を含めて承諾の許否を判断することとなります(借地借家法19条1項、2項)。地主が自ら建物の譲渡や借地権の転貸を受ける旨の申し出をした場合、相当の対価や条件を定めて地主に対する建物の譲渡や借地権の転貸を決定することもあります(借地借家法19条3項)。
また、借地上の建物を取得した第三者は、地主が借地権の譲渡を承諾しない場合には、地主に対してその建物を時価で買い取るよう請求する権利が認められています(建物買取請求権、借地借家法14条)。
借地権の譲渡転貸にあたらない場合
借地上の建物について、所有権を維持したまま、その建物を第三者に賃借することことは、借地権の譲渡あるいは転貸にはあたりません。借地人としては、借地上の建物を第三者に賃借することについては、地主の承諾無しに行うことができ、自ら所有する建物から一定の収益を挙げることが可能です。
0コメント