相続放棄
以前に述べたとおり、金銭債務(マイナスの財産)は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて各相続人に承継されるため(最高裁昭和34年6月19日判決)、相続人間で分割を協議する対象となりません。
相続人として、金銭債務(マイナスの財産)を相続することを回避したいと考えるのであれば、取得額なしとする遺産分割協議をするのではなく、相続放棄の手続をとる必要があります。
相続放棄をする場合、自分のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をしなければなりません(民法938条、915条)。
この「自分のために」というのは、「自分が相続人となったこと」を指しますので、例えば、相続人としての順位が第2順位である父母や、第3順位である兄弟姉妹が、先順位の者が相続放棄をしたことにより相続人となった場合には、先順位の者の相続放棄により自己が相続人となったことを知ったときから起算されることとなります。
また、被相続人に全く相続財産が存在しないと信じていた場合で、後日、実際には相続財産が存在していたことを知ったような場合に、実際には相続財産が存在していたことを知った時から3か月以内であれば、自分が相続人となったことを知った時から3か月を超過していたとしても相続放棄が有効であるとされることもあります。
ただ、実務的には、万が一にも金銭債務を相続してしまうことを免れたいのであれば、被相続人が死亡してから3か月以内に確実に手続を取っておくことが重要でしょう。
また、相続開始から3か月以内であっても、その期間中に相続財産を処分したりすると、相続を承認したものとみなされ(民法921条)、相続放棄ができなくなることがあるので注意が必要です。
相続放棄の申述書は、裁判所のホームページで書式をダウンロードすることができます。
提出する先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
0コメント