各種の強制執行手続
不動産強制競売
不動産強制競売は、執行裁判所が債務者の不動産を差し押さえて、売却、換価し、その代金をもって債務者の弁済に充てる手続です。
対象となる「不動産」とは、土地、建物その他登記のできる土地の定着物です。
債権者が、執行の対象とする不動産の所在地を管轄する地方裁判所に対し、不動産強制競売の申立書を提出することにより手続が始まります。
売却の方法は、民事執行法、民事執行規則において、期日入札(規則34条~)、期間入札(規則34条~)、競り売り(規則50条)、特別売却(規則51条)の4種類が定められていますが、ほとんどの裁判所で期間入札による売却が行われており、売れ残り物件の売却などの場合には特別売却の方法が利用されています。
なお、不動産強制管理といって、債務者所有の不動産を換価することなく、その収益を執行裁判所の選任する管理人において収受させ、これを債務者の弁済に充てる手続もありますが、それほど多くは用いられていないようです。
債権差押
債権差押は、債務者の第三者に対する債権を差し押さえ、これを換価して債務者の弁済に充てる手続です。
対象となる債権は、主に金銭債権となります。
債権者が、債務者の住所地を管轄する地方裁判所に対し、債権差押命令申立書を提出することにより手続が始まります。
裁判所による債権差押命令は、通常まず第三債務者(差し押さえる債権にかかる債務者)に送達され、その後、債務者に送達されます。債務者による処分を避けるために、第三債務者に先に送達するわけです。
また、債権差押命令申立を行う場合、第三債務者に対する陳述の催告をあわせて申立てることができます。この申立を行うと、裁判所から第三債務者に対し、差押命令とともに第三債務者の陳述催告書が送付されます。第三債務者としては、被差押債権の存否、種類、額等の事項につき裁判所に書面で回答する義務を負います(民事執行法147条)。債権者としては、この第三債務者の陳述に基づいて、差し押さえようとする債権の存否、実際に支払を受けられるか、競合する債権者がいるかなどの事情を認識することとなります。
陳述の催告を受けた第三債務者が、故意または過失により、陳述しなかったとき、または不実の陳述をしたときは、これによって生じた損害を賠償しなければなりませんので(民事執行法147条2項)、第三債務者としては誠実に陳述しなければなりませんし、債権者としては第三債務者の陳述に不審な点があるような場合には、積極的に確認あるいは追及していくべきでしょう。
差押命令が債務者に送達されて1週間(ただし、給与差押の場合には例外があります)を経過すると、債権者は第三債務者から直接債権を取り立てることができます。第三債務者が任意に支払に応じないときは、第三債務者に対する取立訴訟(民事執行法157条)を提起して回収を図ることになります。
また、第三債務者は、差押にかかる金銭債権の全額を供託して債務を免れることができます(権利供託、法156条1項)。
動産執行
動産執行は、執行官が債務者の占有する動産を差し押さえ、そこから得た売得金等を、債務者の弁済に充てる手続です。
対象となる「動産」とは、民法上の動産(民法86条2項・3項)のほか、登記することのできない土地の定着物などです。登記することのできない土地の定着物というのは、具体的には、建設中の建物のほか、庭石、石灯籠、ガソリンスタンドの給油設備などが挙げられます。
債権者が、執行の対象とする動産の所在地の裁判所執行官に対し、動産執行の申立書を提出することにより手続が始まります。
売却の方法は、民事執行法、民事執行規則において、入札、競り売りのほか、随意契約、陳列販売などの随意な方法で売却できるとされていますが(法134条、規則121、122条)、実務ではほとんどの競り売りの方法が利用されています。
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